英語の漫画や歌詞に、hafta (=have to), wanna(=want to)など、異様な綴りの語が現れることがある。
これらは、<異文字>(allograph)と呼ばれ、通常の辞書には掲載されていない。
<異文字>は、煙草(Kool (cool) ace)やビール(Miller lite (=light)など、商品名にも表れる。
人々が普段使っている<文字>には、道理に合わないものが多い。
たとえば、lightのghは発音に関与しない。
一方、<異文字>は、不合理な制度に対する異議申し立て、と考えることができる。
マイルス・デイビスの曲KIXは、 kicksの<異文字>である。
これは、野球チーム Boston Red Soxのsox(=socks)と同じ綴り方である。
この非正規の綴りは、いかにも異端児マイルスらしい。
kick(s)には種々の意味があるが、その中に『快い興奮、刺激』がある。
マイルスの曲名は、これに該当する。
この意味でのkicks(=kix)は、『ときめき』という日本語が相応しいと思われる。
ふじみ野市在住スナフキン
スナフキン (土曜日, 09 4月 2016 06:05)
ミーとスナフキンの会話
ミー 「ねえ、スナフキン。異文字って、歌詞や漫画以外にもあるの?」
スナ 「昔、アメリカを旅した時、沢山出くわしたよ。テキサスのレストランのメニューには、egg(卵)の代わりに、aigと書いてあったな。あとは、バス停のトイレの無数の落書き。そのほとんどが異文字さ。should have の代わりに、shud of なんて書いてあった。」
ミー 「異文字って、今だけ見られるの?」
スナ 「実は、昔から異文字はあったんだ。中世のイギリスでは、stone(石)という単語は、stown, stoun, staun など、色々に綴られていたんだよ。」
ミー 「へえー。それが、どうしてstone一つになったの?」
スナ 「昔は、筆記者が自分の発音に合わせて、我流で羊皮紙に文字を書いていた。それで、同じ単語でも色々な綴り方があった。ところが、ドイツ人のグーテンベルグが印刷機を発明した。それがイギリスにも導入され、色々な綴り方が統一されたのさ。」
ミー 「一つの単語に色んな綴り方があるのは不便だから、いいことね。」
スナ 「そう思うだろ。でもね、そうじゃないんだ。綴り方の統一は、政治と深い関係があるんだ。」
ミー 「ええ? どういうこと?」
スナ 「綴り方だけじゃなくて、言葉全体もそう。ナチスドイツは、フランスやチェコに侵攻した時、住民にドイツ語だけを使うように命令したんだ。」
ミー 「ああ、ドーデの『最後の授業』っていう小説があったわね。」
スナ 「日本も、同じことをした。旧日本軍は、朝鮮や沖縄で、住民に日本語を使うように強制したんだ。」
ミー 「ということは、綴り方どころじゃないわね。」
スナ 「現代でも、NHKや国語審議会は、色々な言葉の制限を課している。それが、辞書編集者に影響を与える。「んだ」なんて言う単語は、収録されていないだろう?」
ミー 「辞書に載っていない単語って、本当は沢山あるのね?」
スナ 「国家権力は、必ず言葉を統一化しようとする。でも、人間の生の言葉は、辞書よりはるかに豊かなんだ。」
ミー 「ということは、kixも自信を持っていい訳ね。」
スナ 「今は日の目が当たらなくても、将来この綴りが主流になるかもしれないよ。正統と異端が交替するのは、歴史ではよくあるからね。」
(ふじみ野市 スナフキン)
ヘアスタイリスト 長岡 ひろし
資生堂美容学校を卒業後、原宿のサロンに勤務。
その後、上福岡に出店、目白に支店を出店し15年間営業。
2011年に上福岡にプライベートヘアサロンをオープン。
レセプション /フェイシャルエステ
長岡 純子
資生堂美容部員から都内の
ホテルに勤務。
お客様の目線からのアドバイスをさせていただきます。